知的財産の創出や、知的財産権の取得、活用をサポートする専門家として弁理士という資格があります。
多くのオフィスでは、弁理士の円滑な業務を補助するため、特許事務を行う担当者が従事しています。
では、特許事務担当者は具体的にどういう役割を担っているのでしょうか?
でも実は、クライアントが無事に権利を取得するまでの、重要なポイントとなる業務にも携わっているんですよ。
特許事務のこと詳しく聞いてみたいです!!!!
今回は、弁理士の先生方とタッグを組んでクライアントの知的財産権の取得をサポートする特許事務について、ご紹介したいと思います。
本記事の内容
(1)特許事務が大切にする基本。
(2)期限管理の重要性。
(1)特許事務が大切にする基本
1.出願から権利化までの基本的な知識の習得
2.事前に手続の方式要件の根拠を確認(法改正、運用変更が多いため)
3.事前調査にて不明な点など個別の案件に応じて特許庁へ相談
4.弁理士、事務担当者と情報共有
知的財産権の取得が第一の目的であるため、「権利の取得また権利の維持のために必要な事務を履行すべきタイミングで行うこと」が極めて重要となります。
またその事務は特許庁が定めた方式要件を備えた正確な手続であることが求められます。
法改正や運用変更が多いため、方式要件の確認は特に大切です。
権利化への円滑な道のりには
①基本的知識の習得、②庁手続の方式要件に合致しているかを確認、③明瞭でない点を特許庁へ確認した上で手続を行う、④経過状況について、またノウハウの蓄積のため、所内で情報を共有する、この「基本」を繰り返し徹底することが、非常に大切なのです。
(2)期限管理の重要性
特許事務の仕事の1つに期限管理があります。
特許庁へ何日までに書面を提出しなければならない、何日までにお金を納付しなければならない、というような期限です。
たとえば
① 審査請求期限 出願日から3年
② 優先権主張期限 出願日から1年
③ 国内移行期限 優先日から30月
④ 特許料納付期限 謄本送達後30日
⑤ 年金納付期限 登録日から1年ごと
これらの期限を徒過してしまうと、権利化できたはずのものができなくなる、また権利を維持できたはずのものが失効することになります。
さらに付け加えると、期限までに<適切かつ有意義な書面>を提出するためには、
「弁理士が熟考し的確な書面を期限前に完成させる充分な時間が必要」
「クライアントがどのような方針で権利化を進めるのかを検討する時間が必要」
「弁理士、クライアントが充分に思案できる時間を持てるよう、然るべきタイミングで特許事務担当者が庁期限を発信することが不可欠」
であるといえます。
しかし、常に弁理士やクライアントとうまく連携がとれる訳ではありません。
そんな時こそ、まさに特許事務の腕の見せ所!
こんなことが起きます・・・
<状況>
特許査定を受領し、登録料納付についての指示を仰ぐ報告をクライアントへ行った。
設定登録料納付期限が到来したが、クライアントからの指示がない。
<対応①>
期限が到来してしまったので、設定登録料を納付する。
!NG!:登録料を納付すると特許権を取得できるが、分割出願の機会を逸失する。
<対応②>
クライアントからの指示がないので、手続を行えず、そのまま放置する。
!NG!:放置すると特許権とならない。
<対応③>
弁理士に状況を報告、弁理士が事前に分割出願の可能性がある旨を事前に聞いていたことが判明、設定登録料納付期限を延長するための期間延長請求を行う。
★BEST★:クライアントの意向を把握している弁理士と状況を共有し、看過できない情報を得たことで、当該案件の権利化、さらに分割出願できる可能性を残した対応といえる。
特許権は、時に会社の命運を左右することもあります。
つまり、これらの期限管理はクライアントの経営に直結する可能性を含んでおり、特許事務が担う非常に責任の重い重要な業務なのです。
そのため、クライアントによっては、特許事務員のキャリアが重要視されるところが多くなっています。
今回は特許事務が担う大切な基本と期限管理にフォーカスしてみました。
このブログではこれからもどんどん特許事務に役立つ情報を発信していきますのでご覧いただければと思います