特許事務の仕事をこれまでに17年間しています。
特許事務以外にも得意の英語を活かして特許翻訳やOA対応まで担当しています!
前回はパリルートとPCT出願の概要についてお話ししました。
パリルートはこちらです。
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パリルートとは|外国特許事務の方・興味ある方に解説
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PCT出願はこちらです。
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PCT出願とは|外国特許事務の方・興味のある方に解説
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今回は、PCT出願とパリルートの中でも、外国特許事務が注意すべき、「翻訳文の提出期限」について知っておくべことを解説していきます。
本記事の内容
・PCT出願とパリルートにおける翻訳文提出期限とは ・パリルートにおける翻訳文提出期限 ・PCT出願における翻訳文提出期限 ・翻訳文提出期限が外国特許事務で重要であること
本記事の信頼性
この記事を書いている私は、特許事務員として17年間特許事務所で働いた経験があり、外国特許事務に詳しいです。
こんな読者におすすめです
特許事務所の特許事務職で働いて経験の浅い方
特許事務所の特許事務志望の方
本記事を読めば、PCT出願とパリルートにおける翻訳文提出期限について深く理解できます。
翻訳文提出期限とは!?
翻訳文提出期限とは、翻訳した明細書等を現地の特許庁へ提出する期限を言います。
どの国も出願は自国の言語ですることを規定しています。
日本への出願➤日本語
米国への出願➤英語
中国への出願➤中国語
このため、日本で出願した明細書を外国に出願する場合、その国の言語に翻訳する必要があります。
翻訳文提出期限は「パリルート」の場合と「PCT出願」の場合とで異なってきますのでそれぞれについて解説していきます。
パリルートにおける翻訳文提出期限
過去記事では、全体を簡単に説明するために、パリルートでは、第1国出願日(優先日)から12か月(優先権期限日)内に手続きを完了する必要があると書きました。
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パリルートとは|外国特許事務の方・興味ある方に解説
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しかし、翻訳文は12か月以内に提出する必要はなく、後から提出できる国もあります。(「後補充」といいます。)
以下では、主要国で後補充が可能かどうか(「可否」)、その場合翻訳文提出期限はいつまでなのか説明していきます。
日本の場合
日本では、「後補充」は可能です。
いかなる外国語でも日本へ出願でき、優先権期限日から4か月の翻訳期間が与えられます。
韓国の場合
韓国では、「後補充」は可能です。
ただし、英語でのみ認められています。
英語で出願した場合、優先日から1年2か月以内に翻訳期間が与えられます。
中国の場合
中国では、「後補充」は不可です。
中国へ出願する場合、優先日から12か月以内に中国語で出願する必要があります。
欧州の場合
欧州の場合には、「後補充」は可能です。
いかなる外国語でも欧州へ出願でき、欧州へ出願した日から2か月以内に翻訳文を提出する必要があります。
米国の場合
米国の場合には、「後補充」は可能です。
いかなる外国語でも米国へ出願でき、米国特許庁から通知が出され、その通知に記載の期限内(例えば2か月以内)に翻訳文を提出する必要があります。
PCT出願における翻訳文提出期限
PCT出願の場合には、翻訳文の提出期限は第1国出願日(優先日)から31か月(又は30か月)の猶予が与えられていますが、国によっては更に翻訳文の提出期限の延長をすることができます。
韓国の場合
事前申請すれば、翻訳文提出期限を1か月延長できます。
中国の場合
原則、30か月の期限内に国内移行と同時に中国語の翻訳を提出する必要があります。
ただし、手数料を支払うことにより、翻訳文提出期限を2か月延長ができます。
欧州の場合
31か月の期限内に欧州の公用語(英仏独)のいずれか一言語の翻訳文の提出が求められています。
欧州の場合には翻訳文の提出期限の延長はできません。
米国の場合
原則、30か月の期限内に英語の翻訳文の提出が求められています。
ただし、手数料を支払うことにより、翻訳文提出期限を2か月延長ができます。
翻訳文提出期限が外国特許事務にとって重要です
以上のとおり、「翻訳文提出期限」について各国で制度が様々であり、期限や延長が認められるかどうかも様々です。
外国特許事務では、こうした期限を知った上で、翻訳の発注や現地代理人への出願の発注を進めていくことになります。
このため、外国特許事務では、期限を守りつつ十分な翻訳の時間を確保しながら手続きをすすめていくことが外国特許事務の腕の見せ所といえます。
翻訳文提出期限のまとめ
〇翻訳文提出期限とは
翻訳文提出期限とは、翻訳した明細書等を現地の特許庁へ提出する期限
〇パリルートにおける翻訳文提出期限
〇PCT出願における翻訳文提出期限
ポイント
外国特許事務では、期限を守りつつ十分な翻訳の時間を確保しながら手続きをすすめていくことが外国特許事務の腕の見せ所
このブログではこれからもどんどん特許事務に役立つ情報を発信していきますのでご覧いただければと思います!